ハエトリソウ「葉が閉じる秘密はカルシウムイオンです」

食虫植物の一つとして有名なハエトリソウ、ハエが乗ってしばらく経つと葉を閉じて食べるその衝撃的な映像を見たことがある人は多いでしょう。

さて、ハエトリソウはハエが葉っぱに乗るとすぐに葉を閉じるのではありません。1度触っただけでは閉じず、それから30秒以内にもう一回触ると素早く葉を閉じることが知られています。

どのような仕組みでこの葉を閉じる時間が作られているのでしょうか?最新の顕微鏡観察により、細胞内のカルシウムイオンが維持される時間と葉の閉じるタイミングが一致することが分かりました。それについて少し書きます。

 

ハエトリソウの “カルシウムイオン仮説”

ドイツのボン大学のホディックとシーバースは、ハエトリソウの活動電位が細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させ、その結果、葉が運動するというモデルを提唱しました。
この仮説は、1)感覚毛を刺激すると活動電位が発生し、活動電位によって細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇する、2)カルシウムイオンあるいはそれによって制御される分子が閾値を超えた量まで蓄積すると葉が閉じる、3)1回の刺激ではカルシウムイオンの上昇は閾値を超えることができず、閾値を超えるには、少なくとも2回の刺激が必要である、4)カルシウムイオン濃度は1回目の刺激で上昇後、徐々に減少し、30秒以上たつと、2回目の刺激を与えてもカルシウムイオン濃度が閾値を超えることができないというものです。
プレスリリース – 食虫植物ハエトリソウの記憶の仕組みを解明

 

カルシウムイオンを顕微鏡で見る

現在の科学技術は非常に進んでおり、カルシウムイオンの濃度を蛍光顕微鏡で見ることが可能になっています(カルシウムイメージングと言います)。

カルシウムイオン濃度に応じてGFPの構造が変化する模式図 (Theranostics, 2017)

ノーベル賞で有名なGFP (緑色蛍光タンパク質) を改良することで、カルシウムイオンの濃度が低い時は光らず、カルシウムイオンの濃度が高い時に光る変異型GFPが開発されました。最近のカルシウムイオンセンサー (変異型GFP) は、カルシウムイオンの濃度変化を数十ミリ秒またμMのオーダーで検出できるようになっています ( Nat. Metth., 2020)。すごいですね。

 

ハエトリソウのカルシウムイオン濃度変化の可視化

さて、ハエトリソウに話は戻ります。基礎生物学研究所の研究グループは、新たに技術を開発することで、これまで不可能だったハエトリソウへの遺伝子導入に初めて成功しました。詳細は省きますがアグロバクテリウム法の最適化のようです。

このカルシウムイオンセンサー組み込んだハエトリソウを観察すれば、”カルシウムイオン仮説”を実験的に検証することができます。実際の実験動画を見ると結果は一目瞭然です。

Calcium dynamics during trap closure visualized in transgenic Venus flytrap (Nature Plantss, 2020)

変異型GFP (GCaMP6s) を導入したハエトリソウの葉に触れると、触れたところから迅速に緑色が強くなり、徐々に緑色が弱くなったところでもう一回触れると更に緑色が上昇し、その直後に葉が閉じる様子が見られます。あまりの美しさに感動を覚えます。

 

終わりに

ハエトリソウの葉が閉まるメカニズムが30年以上も前に提唱されていたこと、それを最新の技術で見事に可視化出来たこと、素晴らしいと思いました。植物の研究は実に面白いですね。

 

参考資料

プレスリリース – 食虫植物ハエトリソウの記憶の仕組みを解明

GCaMP6 – Mのメモ

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