特殊なミトコンドリアが味覚の伝達を担う

旨味、苦味、甘みといった一部の味覚情報はミトコンドリアがATPを細胞外に放出することによって脳に伝達されることを示した論文が報告されました。

以下、簡単にまとめます。

 

 

味覚の伝達

我々の舌には味覚を感知する味蕾細胞があります。味蕾細胞は神経細胞とシナプスを作っており、味覚の情報を脳に伝達します。

味蕾細胞はその形から4種類に分類され、発現している受容体や形成するシナプスの性質が違うことが知られています (味蕾 – 脳科学辞典)。

 

味蕾のII型細胞の情報伝達

旨味、苦味、甘みなどの味覚は、舌にある味蕾のII型細胞が受容し、神経細胞へ情報を伝達します。このII型細胞-感覚神経のシナプスは、通常の化学シナプスと異なりシナプス伝達に小胞の放出を介さないという特徴を持ちます。

II型細胞には明確なシナプス構造が見らず、感覚神経線維と非常に近接した部位にsubsurface cisternaeと呼ばれる構造が見られ、ここでATPの放出が起こり神経線維側に存在するP2X受容体を介して情報の伝達が行われます。

ではこのATPはどこから放出されているのでしょうか?細胞内でATPは主にミトコンドリアが合成し、またII型細胞のsubsurface cisternaeでは非典型的な大きいミトコンドリアが観察されています (J. Comp. Neurol., 1998)。さらに、CALHM1という電位依存性チャネルがATPの放出に関わり、旨味、苦味、甘みの感知に必須のタンパク質であることが分かっています (Nature, 2013Front. Cell. Neurosci., 2013)。そこで今回の研究ではCALHM1の分子局在とミトコンドリアの関係を詳細に調べました。

 

II型細胞の情報伝達はミトコンドリアが行う

顕微鏡観察により、CALHM1が受容体細胞と感覚神経線維との非典型シナプスに局在することがわかりました。また、大きなミトコンドリアはシナプス前膜に非常に近接している (20〜40 nm) ことがわかりました。ミトコンドリア阻害剤によって培養II型細胞からのATP放出が抑制されたことから、非典型シナプスでのATPの直接的な供給源がミトコンドリアであることが示唆されました。

 

論文のFig7が模式図です

 

これらの結果から、II型細胞-感覚神経の非典型シナプスではミトコンドリア-細胞膜-電位依存性チャネルが高度にカップリングして情報伝達に適した構造を作っている、と考えられます。著作権の関係で図表の(無料)引用が出来なかったりするのですが、論文自体はフリーアクセスなので興味がある人は是非中身を読んで下さい (Science Signaling, 2018)。

 

終わりに

ミトコンドリアは単にエネルギーを生産するだけでなく、今回の非典型シナプスでの機能のように、様々な機能があることがわかりつつあります。

例えば近年、特殊な単細胞生物ではミトコンドリアが光を集めるレンズの役割をしていることが分かっています (Nature, 2015)。

細胞小器官を応用することで色々な機能を生み出す生物、自然はすごく面白いな、と思わされます。

 

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