二次抗体を大腸菌に作らせる

抗体は医学・生物学研究に欠かせないツールですが、抗体を使う≒動物から血を取るということであり、なるべく動物に頼らずに抗体を得る方法がないかと世界中で模索されています。

ドイツMax Plank研究所のグループは、大腸菌に二次抗体(抗体を認識する抗体)を作らせる方法を開発し、それが既存の動物由来の抗体と同程度に利用できることを報告しました(JCB, 2017)。

以下、内容についてもう少しだけ詳しく書きます。

 

バイオテクノロジーで抗体を作る

ラクダの仲間が作る抗体は、他の多くの動物と異なり、重鎖のみで構成されると言う特徴があります。この特殊な抗体からさらに一つの可変領域を切り出したフラグメントはnanobodyと呼ばれ、これだけで抗原を認識することができます。

ヒトやウサギが自然に作る抗体は約150kDaの大きさであるのに対し、nanobodyは約15kDaです。分子量が小さいため大腸菌を使ってnanobodyを作製することができます。実際、GFP(緑色蛍光タンパク質)に対するnanobodyのアミノ酸配列が広く公開されており、研究室で手軽に作り出すことが可能となっています(GFP-Nanobodyの作製法|日本細胞生物学会)。しかし、目的の抗原に対するnanobodyを人間が自由自在にデザインすることはまだ出来ていないため、市販の抗体を完全に置き換えるまでには及んでいません。

 

IgGサブクラスを認識する様々な人工抗体を作った

二次抗体は生物学の基本的な実験手法にほぼ必須な、世界中で最も良く使われる抗体の一つです。今回の論文ではこれを置き換えることを目指し、スクリーニングを駆使して全てのマウスIgGサブクラスに対応したnanobodyを作りました(JCB, 2017)。

またウサギIgGを認識するnanobodyも作っており、どちらも市販の二次抗体と同等の検出感度を持つことを実験的に示しています。

 

既存の抗体より性能を高め、オープンソース化を進める

通常の二次抗体にないnanobodyの利点として、超解像顕微鏡法に適しているという点が挙げられます。通常の抗体-二次抗体はそれ自体の大きさ(>300kDa→20-30 nm)があるため、数十nmの分解能を持つ顕微鏡では像に影響が出ます。今回作ったnanobodyはそれと比べると像への影響が小さいことを実際に論文中で示しています。

今回得られた研究成果はオープンソースとして提供されており、ベクターはaddgeneで買うことが出来ます(Dirk Görlich Lab Plasmids)。展望として、さらにミューテーションスクリーニングを進めれば、既存の二次抗体よりも抗原との親和性が高いnanobodyが得られるのではないかと筆者らは言っています。

 

終わりに

自然の抗体よりも性能が高く、さらに安価に抗体が作れるとなれば、企業も動物を使った従来の方法からこの方法に移っていくと考えられます。色々な意味で重要な研究成果なのではないかと思いました。

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