人工クモの糸の合成に成功!というニュースについての解説(2017年版)

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「人工クモの糸の合成に成功!」と言うニュースを毎年見ている気がします。つい先日もNature Chemical Biology論文を元にしたネット記事が出回ってました。それについての解説です。

 

 

新しい人工タンパク質の開発

クモの糸を人工的に作製するために重要な点は2つあります。まずどうやってクモ糸の構成タンパク質を安定供給するかという点についてですが、今回の論文ではE. australis由来のMaSp1とA. ventricosus 由来のMiSpをつなぎ合わせた人工タンパク質 (NT2RepCT) を新たに作成し、大腸菌での安定精製に成功しました。

20130831125503

 

クモの分泌腺を模した紡糸装置の開発

次にどうやってタンパク質の液体を細い糸にするかです。クモはクモ糸タンパク質を中性の溶液として貯蔵し、pHを徐々に下げつつ圧力をかけることでことで細いクモ糸として分泌します (PLoS One, 2014、図2)。研究グループはこれを模倣した装置を作成し、直径10μmほどの細い人工クモ糸を作り出しました (図3)。今回の研究ではなんと1Lの大腸菌培養液から1kmもの人工クモ糸を紡ぎ出せるそうです。これはたしかに凄い。

journal.pbio.1001921.g001

nchembio.2269-F1

 

 

さらなる人工クモ糸の改善に向けて

さて、これで人工クモ糸が完成したぞめでたしめでたし、と言って良いのでしょうか?この論文では作成した人工クモ糸の機械特性を測定し、自然のクモ糸、また先行論文の人工クモ糸と比較しています。今回の論文の人工クモ糸タンパク質 (NT2RepCT) は先行するものに比べて細く強いと言えますが、自然のクモ糸は様々な人工クモ糸と比べて遥かに細く強いことが分かります (表1)。

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確かにクモ糸を模した糸は人間の手によって作られつつありますが、まだ自然が作り出したものに比べて性能が劣ります。今後の研究の進展、さらに国際的な製品化競争はどうなっていくのでしょうか。クモ糸研究ウォッチャーの一人として目が離せません。

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