CRISPR法によるRNA編集

「ゲノム編集」はここ数年の生命科学の中心的トピックの一つです。ゲノムの配列を認識するガイドRNA、それを目印にゲノムを切断するタンパク質を用いることで、これまでに比べて簡便にゲノムを切ったり組み替えたりすることが可能になりました。

同様の方法を使えばRNAの人為的な編集も出来るのではないかと考えられています。しかし、人為的なRNA編集に使えるタンパク質はまだ見つかっていませんでした。

今回、アメリカの研究グループはC2c2と言うタンパク質がこのRNA切断活性を持つことを実験的に示しました。このタンパク質を用いれば人為的なRNA編集が可能になり、異常なRNAを原因とする病気の治療法になると期待されます。

 

以下、もう少し詳しい説明文を書きます。

 

 

クラス2Casタンパク質の網羅的探索によるC2c2の同定

CRISPR法は、標的配列に相補的なRNAとそれを認識して核酸を切断するCasタンパク質によって成ります。Casタンパク質にはマルチサブユニット複合体からなるクラス1、単一タンパク質のクラス2がありますが、ゲノム編集のツールとしてはクラス2のCasが使われています。

代表的なクラス2のCasであるCas9やCpf1はDNAを切断しますが、自然界に存在する未知のクラス2Casタンパク質はDNAだけでなくRNAを切断できる可能性を秘めています。

c2c2

そこで新しいクラス2Casタンパク質を見つけるために、アメリカの研究グループは微生物ゲノムデータベースを網羅的に探索し、新たにC2c1, C2c2, C2c3と言う3つの候補タンパク質を同定しました (Molecular Cell, 2015)。これらの候補タンパク質がどのような活性を持つのか調べたのが、2016年の論文になります。

 

 

C2c2はRNA依存性RNA切断酵素である

今回の研究により、C2c2は一本鎖RNAを切断する酵素であることが分かりました。C2c2によるRNAの切断は、標的RNAに相補的なRNA依存的に起こることから、このタンパク質を用いることで人為的なRNAの編集が可能になると期待されます。実際、C2c2によって外来性のタンパク質 (RFP) のmRNAを切断出来ることが示されました。

今回の論文は、まだ大腸菌を使った研究ですが、今後は哺乳類の細胞でも同様の実験が進められて行くでしょう。本当にRNAを「編集」出来るようになるかは現時点では不明です。今後の技術革新が期待されます。

 

 

終わりに

C2c2の発見が2015年、機能解析が2016年。次のステップは技術応用でしょうか。実験生物学的に使いやすいツールになるのではないかと期待しています。

バイオテクノロジーの発展は日進月歩。「核酸編集ツールによる病気の治療も遠くない未来に実現されるのかもしれない」と思わされる今日です。

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