モーターのように回転するタンパク質の可視化で著名な木下一彦教授が死去された

衝撃のニュースにショックを受けております。

早大・木下一彦教授、滑落死か 南アルプスで遺体発見:朝日新聞デジタル

木下一彦先生はF1-ATP合成酵素と言うタンパク質が回転することを実証し、「1つの分子を顕微鏡で見る」と言う学術分野を切り開いたことで著名な方です。

 

生命の通貨“ATP”を合成する酵素

ATP (アデノシン三リン酸) は生命に欠かすことの出来ない物質であり、エネルギーの放出・貯蔵を行う役目を持ちます。

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ATP合成酵素 (F1-ATPase) は分子が動くことによってATPの合成を行う

1990年代までに、ATPを合成する酵素が同定され、このF1-ATP合成酵素は動くことで機能する分子であることが分かってきました。

 

しかし1つの分子の動き (ナノメートルの大きさ!) を調べるのは非常に難しく、実際にF1-ATP合成酵素がどのような動きをしているかは謎に包まれていました。

 

 

ATP合成酵素が回る様子を顕微鏡で見た

木下先生らの研究グループはF1-ATP合成酵素の動きを初めて可視化しました。下の動画はF1-ATP合成酵素の頭部にくっつけた紐状の蛍光を経時的に見たものです。

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Direct observation of the rotation of F1-ATPase (Nature, 1997)

反時計回りに紐が回っている様子が一目瞭然です。この実験により、ATP合成酵素がクルクル回る分子であることが初めて直接的に示されました。

 

ATP合成酵素の研究には1997年にノーベル化学賞が授与されています。

木下先生らの顕微鏡観察は受賞者の仮説を実証しただけでなく一分子生物学と言う研究分野を切り開いた先駆けとして高く評価されています。

 

 

終わりに

木下一彦先生の訃報に国内の研究者は大いに驚いております。謹んで哀悼の意を表します。

 

参考文献

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