電気ウナギは獲物の動きをリモートコントロールする

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電気ウナギと聞くとアドルフ・ラインハルトを思い出す皆さんに朗報です。最新の研究でこのウナギが獲物を捉える際に、2種類の放電を緻密に使い分けていることが分かりました。

この論文の成果は今週のScience誌の表紙で大々的に取り上げられています。その内容を簡単に説明いたします。

 

 

電気ウナギは非常に強力な発電能力を持つ

電気ウナギは最大600V程度の電気を作る発電板を持ち、その発電能力は生物界最強とも言われます。放電している電気ウナギに触れると人間やワニなどの大型動物ですらも感電して硬直してしまいます。

この高圧発電は敵から身を守るためにも使われますが、電気ウナギの発電能力は魚やザリガニなどの小さな生き物を捕えるために主に使われると考えられています。

 

餌を捕えるために発電能力はどのようにして使われる?

電気ウナギは濁った川の中で効率的に獲物を見つけるために小さな電気を作る発電板をレーダーのように使っており、また獲物を攻撃するために大きな電気を作る発電板を使っていると考えられています。

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しかし高圧放電の時間は1ミリ秒程度しか持続しないため、水中で獲物を麻痺させることは難しいと考えられます。一説には「獲物の小魚を見つけると体当たりして感電させ、麻痺したところを捕食する。」とされますが*1、実際に電気ウナギが高圧放電をどのように利用して獲物を捕らえているかはよく分かっていませんでした。

 

水中での持続的な高圧放電は離れた獲物の動きを停止させる

筆者は電気ウナギの放電をモニターする機械を用いて、電気ウナギの捕食行動と放電の時間的なタイミングを調べました。以下が実際の実験動画です。

画面の赤い点滅は、それぞれの瞬間に電気ウナギが高圧放電していることを表します。よく見ると、放電が連続して起こっている間は小魚のヒレが止まっていることがわかります。電気ウナギは離れた場所から放電することで小魚の動きを止め、捕食しやすくしているのです。

筆者がさらに研究を進めた所、驚くことに、電気ウナギは高圧放電を獲物を動かすためにも利用していることが明らかになりました。

 

電気ウナギは高圧放電を使い分けて獲物の動きをコントロールする

筆者はエレガントな実験系を組み立て、電気ウナギは捕食の際にどのようにして電気を使っているかを詳細に明らかにしました。本当は図表を交えながら説明したいのですが、Scienceは図表の転載にお金がかかるので文章だけで勘弁して下さい。

1. 電気ウナギは連続放電の前に2-3発の短い放電を行う
2. 電気ウナギの1回の放電は獲物の筋を1回収縮させる

3. 2-3発の放電によって獲物の身体が動くと、電気ウナギは連続放電を開始する

4. 連続放電によって獲物の動きを停止しさせて捕食する

つまり電気ウナギは単に放電しているのではなく、「獲物を動かすための高圧放電」と「獲物を停止させるための高圧放電」を使い分けて狩りをしていることになります。恐らくこれは発電によるエネルギーの消費を最低限に抑えて効率的に餌を捕らえるために獲得した方法でしょう。弱い発電をレーダーのように使っていると言うことと合わせると、獲物を捕えるためになんと3種類もの発電方法を使い分けていることになります。

 

終わりに

え?「電気ウナギが遠隔的に電気攻撃してることなんて想像すれば分かるだろ!」って?まあまあ、Wikipediaには「獲物の小魚を見つけると体当たりして感電させ、麻痺したところを捕食する。」と書かれていますし、分かっているようで分かっていないものも意外とたくさんあるのですよ。

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このモデル図は2004年に描かれたものですが、奇しくも今回の論文の内容を要約したように見えます。色んな電気を使い分ける、電気ウナギって凄いですね。

 

余談ですが、この研究は一人の手によって全てが行われたと言うから驚きです。一人称が「I」の論文はカッコいいですねー。

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