細胞寿司と実際の細胞はどれくらい違うか比較してみた

twitterを見ていたらこんなtweetが流れてきました。石川さんは以前にこのような記事をお書きになり、大変話題になった方です。教科書に載っている細胞小器官の図を見事に寿司に取り込んでいて素晴らしいですね!!!

さて、教科書に載っている細胞のモデル図、実際の細胞とは大きな違いが有ります。せっかくですので、それについて書きます。

 

 

細胞のモデル図

教科書的には、以下の様な動物細胞のモデル図がよく載っています。細胞寿司はこの図の特徴をよく反映していて素晴らしいです。

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多くの人は「見たことはないけど、細胞の中はこうなっているに違いない」と思っているのではないでしょうか。僕も研究を始めるまではそう考えていました。しかしこの古典的な図と、現在の顕微鏡で見える細胞小器官の配置との間には大きな乖離が有ります。なぜなら、この図は細胞を輪切りにして見えてくる図を元に書かれているからです。玉ねぎの断面から、全体の構造を予想しているようなものだと思って下さい。

 

電子顕微鏡で細胞を輪切りにして見る

透過型電子顕微鏡では、細胞小器官はこのように見えます。電子顕微鏡の写真は通常灰色に見えますが、細胞小器官をわかりやすくするために擬似的に色がつけてあります。
細胞や細胞小器官には色がないと思って下さい。我々の目で見える『色』の範囲はたかだか400~800nmの光の波長です*1

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細胞の透過型電子顕微鏡像

電子顕微鏡はナノメートルのレベルで細胞の中を見ることが出来ますが、サンプルを作る過程で細胞小器官の形が変わってしまったりするという問題が有ります。近年は、生きたままの細胞を光学顕微鏡で見ることが出来るようになっています。

 

1つの細胞を三次元的に見てみる

Life technology社のホームページに「細胞染色シミュレーションツール」というものが有りますので、それを例に細胞小器官の配置を見てみましょう。

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青:核、緑:ゴルジ体、オレンジ:ミトコンドリア

核とゴルジ体は古典的なモデル図に似ていますが、ミトコンドリアの見え方はだいぶ違います。1つ1つが粒状になって分かれているのではなく、実際には長いチューブのようになって細胞の端っこまで伸びているのです。細胞の種類によってミトコンドリアの大きさ、形は様々です。でも、ちょっとこれじゃ倍率と分解能が低くてよく分かりませんね。

 

超解像度顕微鏡で見る細胞内の世界

最新の超解像度顕微鏡(ナノメートルのレベルで見える光学顕微鏡)では、ミトコンドリアがこのように見えます。

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超解像度顕微鏡で見たミトコンドリア。粒状のもの、線状のものが混在しているのが分かる

また、細胞のモデル図と実際のものの間に大きな違いがある細胞小器官として小胞体が挙げられます。超解像度顕微鏡で見ると小胞体はこのように見えます。

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超解像度顕微鏡で見た小胞体。網目状のネットワークが核から細胞の辺縁まで広がっている。

小胞体は細胞の中心に限局しているのではなく、細胞の隅々にまで広がっています。これを全部モデル図に描いてしまうとゴチャゴチャしてなにがなんだか分からなくなってしまうから簡略化されているのでしょう。こうしてみると、小胞体が細胞内膜系の大きな部分を占め、またカルシウムの貯蔵庫として働くということが実感できるのではないかと思います。

 

終わりに

一般に細胞を超高倍率で見ることは出来ませんので、細胞染色シミュレーションツールや細胞について書かれた本を見て満足して下さい。

普通では見られない細胞内構造を自分の目で見ることができるから、研究は贅沢で楽しいのです!

 

PS.

まず、全てのものに色があるという概念から離れる必要があります。配置については、細胞染色シミュレーションツールや教科書を見て下さい。ザックリ書きすぎて、専門家の人にはちょっと納得できない記事になってしまい申し訳ないです。

 

PS2.

ここで言われている共焦点レーザー顕微鏡というもので、細胞染色シミュレーションツールのような像が見えます。

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