ナマズのヒゲが感知する意外なもの & 細胞の自殺を抑制する機構

今日のScienceは楽しい論文がたくさん出ていたのですが、その中に日本の研究グループ発の論文が2つありました。論文を精読して記事にしようと思ったら既に大手マスコミが書かれていました。やっぱり研究機関からのプレスリリースが事前に出ているんですかね、記事にするのが非常に早い。

せっかくなので、記事に書ききれなかったであろう背景を補ってみようかと思います。文字数制限がないのが、個人ブログの良い所です。


ゴンズイのヒゲはpHを感知する

ナマズの仲間であるゴンズイ、海で釣った人もたくさんいるでしょう。鹿児島大学の研究グループは、ゴンズイのヒゲが海水中の酸性度を検出する機能を持つことを明らかにしました。

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ゴンズイが酸性度を感知する能力はph8.2の環境(通常の海水と同程度)では非常に高かったが、pH7.9の海水中では感受性が大きく低下した。ゴンズイのヒゲは≦0.1 pHの変化を検出することが出来る。

今回の結果から、ゴンズイは暗い海の中でもゴカイなどが出す二酸化炭素を感知して餌を探していることが示唆されます。
この論文は30年にわたる研究の成果だそうです。いや、素晴らしい!!!生物って楽しいと思わせてくれますね!!

細胞が白血球に食べられない仕組み

全ての細胞は必ず細胞膜を持っています。細胞膜は細胞の中と外の環境を分ける脂質で出来た膜です。細胞膜(とその中に存在するタンパク質)は、細胞が圧力や化学シグナルといった外的な情報を感知するために必須です。また、細胞は細胞膜の構成成分を変えることによって他の細胞とコミュニケーションをします*1
つまり、細胞膜が適切に調節されることは細胞の正常な機能に必須であり、ひいては我々の身体が健康的に保たれるために不可欠であると言えます。

我々の身体の中では毎日無数の細胞が死んでいきます。その中には傷ついて死ぬ細胞もあり、また身体を正常に保つために自発的に死ぬ細胞もあります。この細胞の自殺のことをアポトーシスと言います。例えばガン化した細胞は、アポトーシスによって取り除かれることで、腫瘍が悪性化することが未然に防がれているとされます。

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アポトーシスをする細胞は、細胞膜上に「私は死ぬから食べて!!!」と言うマーカーを出すことが分かっています(Exp. Cell Res., 1997)。京都大学の長田教授らの研究グループは、以前の研究で「私を食べて!(ホスファチジルセリンの表出)」を引き起こす分子メカニズムを明らかにしています (Nature 2010, Science 2013)

ではなぜ正常な細胞には「私を食べて!」と言う目印が出ていないのでしょうか?

研究グループは、生きた細胞の表面に目印分子が出てしまうのを防ぐタンパク質CDC50Aを見つけた。CDC50Aを欠損した細胞は正常なのにも関わらず、目印分子が表面に出て貪食細胞に食べられた。また研究グループは目印分子を出してアポトーシスを誘導するタンパク質ATP11Cを見つけた。

ATP11Cはカスパーゼ依存的な制御を受けるフリッパーゼであり、またCDC50Aはそのβサブユニットであるそうです。京都新聞の記事には「ATP11Cを欠損した動物では~」と書いてありますが、これは間違いだと思います。
ATP11C欠損動物は以前に外国の研究グループがB細胞の分化における機能を調べており (Nature Immunology, 2011)、京都大学のグループは、この論文で見られていたB細胞の減少にはアポトーシスが関与しているのではないかと考察していました。

終わりに

京都大学のプレスリリースが見つけられなかった・・・。どっかにありますかね。

長田重一先生は、アポトーシスの研究で世界的に著名な研究者です。僕のフォロワーさんで「アポトーシス授業でやってる!!」と言っている人がいましたが、アポトーシスを誘導するFasリガンド*2を発見されたのが米原先生と長田先生です。興味があったら、長田先生のインタビュー記事 (死の側から生を見る分野を確立 – 長田重一) を見ると感銘を受けると思います。ではでは。

アポトーシスとは何か―死からはじまる生の科学 (講談社現代新書)

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