Cell, Nature, Scienceを見ていたら一週間のうち3本も日本の研究グループから論文が出ていたので。
世界選手権で金メダル3連発みたいなもんですよ。
タンパク質を細胞膜に組み込む「膜組み込みタンパク質YidC」の立体構造を世界で初めて決定した
東大 濡木研究室とNAIST塚崎研究室よりNature。構造の論文って前提知識がないと面白くないし、非専門家がタンパク質構造を見ても面白く無いからあまり話題にならない。「一般受けしないからブログ記事を書くのを避けてしまう」っていうのは、良くないと思っているんだけど、あるんだよなあ。
バクテリアから人まで共通している、タンパク質が生体膜に組み込まれる分子メカニズムを詳細に解明しました。
ちなみに筆頭著者は博士課程2年生です。圧倒的なパウワ。
Natureなう!!
— kkmzk (@kaoru_p) April 16, 2014
僕の論文が公開になりました。リバイズに苦労しましたが、良い論文になったと思います。共著の方はもちろん、N研やBLスタッフの方々には大変お世話になりました。本当に有難うございました。http://t.co/9HOLkdvsCR
— kkmzk (@kaoru_p) April 16, 2014
塚崎准教授より一言。
メッセージを頂いた方,祝福の言葉ありがとうございました。
— Tomoya Tsukazaki (@ttsukaza) 2014, 4月 17
「細胞をタイトに接着させる分子Claudin」の立体構造を世界で初めて決定した
クローディン*1と言う分子は分子細胞生物学をやっている人は皆知っていると言っても過言ではないでしょう。京都大学の月田承一郎先生が発見されたこの分子は、細胞を密に接着させて(タイトジャンクション)物質が透過するのを防いでいます。月田先生は2005年に惜しくも亡くなられました。他界する一ヶ月前に書き上げられたという本は読んで損はないでしょう。

小さな小さなクローディン発見物語―若い研究者へ遺すメッセージ
- 作者: 月田承一郎
- 出版社/メーカー: 羊土社
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- メディア: 単行本
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さて、クローディンは1998年に発見された分子です。しかしそれから15年以上も経っているのに、未だ「クローディンはどんな構造を作るタンパク質であり、どうやって細胞膜を密着させているのか」はよく分かっていませんでした。それを解いたのが、名古屋大学細胞生理学研究センター 藤吉研究室、大阪大学 月田研究室(奥様です)、東京大学 濡木研究室の共同グループというわけです。
クローディンが脂質膜中で数珠つなぎに並んだ構造を形成することが明らかになり、細胞間隙を通るイオンなどの透過経路も予想する事ができました。
脳を透明化させる新たな試薬を開発した
脳を透明化させる技術というと、記憶に新しいのが昨年のNatureに出たClarity*2、また3DISCO、Sca/eも有ります*3。昨年には理研CDBから脳を透明化する試薬SeeDBが発表されて話題になりました*4。
今回の論文は、理研CDBプロジェクトプロジェクトリーダー東大教授兼任の上田泰己先生のところから発表されたものです。前述したSca/e(こちらも理研発)は尿素で親水性を上げて脳を透明化する技術でしたが、今回のCUBICは尿素にアミノアルコールを加える事で透明性が更に高まることを見出しました。
CUBICは全脳、あるいは全身の細胞の働きを、1細胞解像度で網羅的に観察できる技術です。
成体の脳を透明化する新技術CUBICがCell誌に公開されました。洲崎さん(医学)・田井中さん(化学)・Perrinさん(情報科学)らの成果です。全脳を1細胞解像度で定量比較し、サルの脳も透明化可能です。興味がある方はこちら→http://t.co/NevzUV6DqZ
— Hiroki R. Ueda (@hiroking1975) 2014, 4月 17
終わりに
すごい研究成果が毎週のように発表されてるのにそれが知られないのは勿体無い。理研はプレスリリース強いけど、大学のプレスリリースは”はてぶ”に拾われでもしない限り全く広まらないと言った印象があります。
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PS.id:tdam言いたいことは理解出来るのですが、素晴らしい仕事の価値が広く伝わらないのは如何なものかと思いますが。確かにタイトルは良くないかもしれませんね。
これらの仕事は私が紹介する価値が高いと判断したから紹介しています。
*2:『電気泳動で脳を透明化する技術』が凄い!Natureに出た衝撃の論文に世界中の科学者が沸く – アレ待チろまん