細菌のⅳ型分泌装置の構造がカッコ良すぎる

今日のNatureに載っているⅳ型分泌装置の構造があまりにもカッコ良くて感動しました。

「解かれた構造を見てもよく分からないなー」と言うのが門外漢の私がよく抱く感想なのですが、ⅳ型分泌装置の構造はネタとしても生物学的にも大変面白かったです。簡単にご説明したいと思います。


病原菌感染の分子メカニズム

病原細菌が他の生物に病原因子を注入する際に使われる分子マシーン、それが分泌装置です。特にⅲ型とⅳ型の分泌機構が多くの病原細菌に存在することから「これらの分泌装置の詳細な構造が解明できれば、そこを標的として病原菌の感染を防ぐ薬が作れるかもしれない」と盛んに研究が行われています。

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ⅳ型分泌機構は病原因子だけでなくDNAの注入を行う役割を持ちます。ⅳ型分泌装置を通じて多くの薬剤耐性遺伝子が菌種を超えて伝搬していると言われており、その構造の解明ができれば、単に病原菌の感染を防ぐだけでなく病原菌の薬剤耐性獲得を防止する糸口となると考えられています。

ⅳ型分泌装置の部分構造は既知

これまで多くの研究グループがⅳ型分泌装置の構造解析に取り組んできました。2009年には内外膜を貫通する中核複合体の構造が解かれ、ⅳ型分泌装置の理解が進みました(Nature 2009, Science 2009)。さあ、3つのうちどれがⅳ型分泌装置の中核複合体でしょうか?一瞬悩んでしまうほどカッコいい構造です。

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中核複合体の構造はどう見ても鉄仮面

先行研究によって中核複合体の構造は分かりました。しかしⅳ型分泌装置は中核複合体に加えて複数のタンパク質が複雑に組み合わさって出来ており、その詳細な機能を知るためには全体構造の解明が必要です。

完全に近いⅳ型分泌装置の構造が解けた

実験の詳しい説明は後回し、こちらが本邦初公開、ⅳ型分泌装置の構造でございます。

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ⅳ型分泌装置を探せ!!

実にカッコいいですね!鉄仮面のような中核複合体と対照的な構造が内膜側にも現れると思ったら、実際には2つの大きい足のような構造があったとは。びっくりです。

さて、少しだけ真面目な実験の話をしましょう。ⅳ型分泌機構は12種類のタンパク質 (VirB1-11, VirD4) が関わっていますが、脂質二重膜を貫通するpore構造はVirB3-10によって形成されます。この論文で筆者らはVirB3-10を大腸菌に発現させて精製し、電子顕微鏡を用いてⅳ型分泌装置 (VirB3-10) の三次元構造立体再構築を行いました。

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複数の試料調整方法で構造を確認し、さらにTyr:I125法でサブユニット量比を決定し、免疫電顕でサブユニットの位置決めをして、最終的なモデルを作り上げています。今回の研究では8種類のタンパク質から全体構造を再構築したので、まだ4種類のタンパク質がどう配置するかは不明ですし、赤矢印に当たる部分における詳細なタンパク質の配置は不明です。

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この結果から、ⅳ型分泌装置はⅲ型分泌装置とは明らかに異なる構造をしていることが分かりました。ⅳ型分泌装置の構造データを元に、細菌の感染を防ぐ新しい薬が作られたら、それはとっても幸せなことですね。

終わりに

今ではNature電子版が500円で読めるようになりましたので、興味がある人は是非元論文を当たってみてください。面白いです。

あ、最後に細菌の分泌機構の日本語総説を参考文献として載せておきます。全部日本語で読めるので大変ありがたいです、勉強になりました。

参考文献

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