Scienceが新たにオープンアクセス誌を創刊するんだってさ

AAASが新しいオープンアクセスジャーナルを作る予定であることが明らかにされました。誌名はScience Advancesです。

AAAS will be launching, in early 2015, a digital-only journal, Science Advances. The journal will publish original research and review articles only. To ensure the greatest accessibility for authors and readers, the new journal will be open access.

さて、このブログを見てくれる人の中には「Science Advances?なにそれ美味しいの?」と言う方もいらっしゃるかと思います。せっかくなので、科学雑誌についての簡単な説明文を書きました。


自然科学の三大誌≒週刊少年漫画の三大誌

自然科学研究の世界には無数の学術誌があります。その中でもNature, Science, Cellは最も権威のある学術誌であるとされ、多くの科学者に読まれています。例えるならば少年ジャンプ, 少年マガジン, 少年サンデーのようなものです。

f:id:mdr52:20130508130420p:plain
NatureとScienceは数学, 化学, 物理, 生物, 地学など自然科学全般の研究成果が掲載される総合誌。Cellは細胞生物学の専門誌。

これら三大誌に発表される論文には、世界中の科学者のみならずマスメディアも注目しています。山中先生のiPS細胞の論文はCellに掲載され、また先日のSTAP細胞の論文はNatureに掲載されたと言えば、これらの科学誌にいかに大きなインパクトを持つ論文が掲載されるか想像出来ると思います。

三大誌がこぞって電子ジャーナルを作り始めた

近年になって紙媒体を持たず、電子媒体だけで刊行される科学雑誌が創刊され始めました。

f:id:mdr52:20140214223521j:plain

Nature publishing groupは2011年にScientific Reportsを、2012年にNature Communicationsを創刊しました。またCell pressは2012年にCell Reportsを創刊しました。

今回の発表は、ついにScienceもオンラインジャーナルに参入したと言うことに話題性があるわけです。

三大誌が電子ジャーナルを作り始めた理由

三大誌には毎週数多くの論文が投稿されますが、その採択率は非常に低いことが知られています。

Nature には、毎週およそ200編の論文が投稿されていますが、誌面に限りがあるため、そのわずか8%あまりの論文しか掲載できません。したがって厳しい選考基準が適用され、多くの投稿原稿は査読を実施せずに却下されています。

論文が掲載を拒否されると、研究者はそれを載せてくれる雑誌を探し回ります。ジャンプに載らなかったから他社に持ち込むようなもんだと思って下さい。

しかし三大誌側からすれば、本誌に掲載するほどのインパクトではなかったとは言え、クオリティの高い論文を他社の雑誌に流れさせたくありません。そこで出版コストの低いオンラインジャーナルを作って、他社に流れそうな層を取り込もうと考えました。

Nature は、これからも科学の最も重要な進歩を出版し続け、Nature 関連誌は、各専門分野における画期的な論文を掲載します。Nature Communications には、科学の領域における質の高い論文が掲載されますが、必ずしも Nature や Nature 関連誌に掲載される論文ほど広範囲にわたる科学的影響力をもつ必要はありません。

電子媒体に一本化した科学誌は、出版側からするとコストの削減、投稿側からすると出版手続きの迅速化など、メリットが多いと言われています。

Science Advancepの査読形式

Science Advancesはカスケード査読形式を採用するそうです。カスケード査読とは、ある雑誌に掲載拒否された論文を、その査読レポートを引き継いで、同じ出版社の他の雑誌に投稿することが出来ると言う制度です。

Papers favorably reviewed at Science, Science Translational Medicine, or Science Signaling but declined for lack of space can be considered automatically for publication in Science Advances. This can occur through a cascading process without further review or further effort on the part of the authors.

通常は雑誌を変えて再投稿すると、査読する人が変わるため全く違った追加実験を要求されることがあります。追加実験は研究者にとって非常にストレスが溜まることであり、これを繰り返すうちに論文の受理がどんどん遅くなってしまいます。カスケード査読はこうした余分なプロセスを削減できると期待されています。

終わりに:オープンアクセスジャーナルとは

学術誌は論文を掲載し、読みたい人から購読料を得る事で成り立っています。しかし論文を読むためにかかる費用は高価であり (Natureは論文一報で3,300円)、興味がある論文だからと言って、非研究者が気軽に読むには金銭的に難しいことが問題になっています。

この状況を打開し、誰もが学術論文を無料で読める学術誌が作られ始めました。これをオープンアクセスジャーナルと言います。普通の学術誌は読み手がお金を払いますが、オープンアクセスジャーナルは論文の書き手がお金を払う、ここが大きなポイントです。

Science Advancesはオープンアクセスジャーナルであると明記されており、誰もが無料で論文を読める雑誌になります。

To ensure the greatest accessibility for authors and readers, the new journal will be open access, with publication funded through author processing charges.

誰もが最新の研究論文にアクセスできる、そんな状況になったら素晴らしいですね。まあ出版社も営利組織なので、完全無料化になることはないと思うのですが・・・。

研究者と論文誌を取り巻く問題について興味をもった人は、以下の記事を参考にすると勉強になると思います(丸投げ)。ではでは。

参考資料

Pocket