「人工細胞ができたって!?」ちょと大げさすぎるかな、細胞の定義を考えてみよう。

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プラスチックで真核細胞が出来たと言うニュースが話題になっております。ちょっと大げさなタイトルですかね。

真核細胞が出来たと言ってしまうのならば、今回の研究は真核細胞の要素をすべて満たしていなければいけません。それについて少しだけ書きます。


細胞の定義はなんだ

まず細胞とはなにか、Wikipediaを読んで復習してみましょう。

細胞には、細胞質と外界を隔てる膜構造に包まれ、内部には解糖系・クエン酸回路などの代謝する経路などを担い生命活動を恒常的に行う器官を持ち、自己再生と複製をするための遺伝情報とそれを発現させる機能が備わっている。

ふむふむ、つまり人工細胞を作るためには以下の3つが必要であることが分かりますね。

  • 細胞質と外界を隔てる膜
  • 生命活動を恒常的に行う器官
  • 自己複製をするための装置

これらを満たすことが出来れば人工的に細胞が作れたことになります。しかし『真核細胞』を作ることは単に細胞を作るよりも更に難しく、これらの条件に加えて更にいくつかの条件を満たす必要があります。

真核細胞ってなんだ?

細胞は原核細胞と真核細胞の2つに大別することが出来ます。バクテリアやラン藻に代表されるのが原核細胞(原核生物)、植物細胞やヒト細胞などが真核細胞です。

真核細胞の染色体のDNA は核の中に閉じ込められており核膜によって細胞質と隔てられている。真核細胞の細胞質には細胞骨格が存在し、これが各細胞の形を決定づける。細胞小器官は細胞骨格に定着している。真核細胞では細胞壁が有るものも無いものもある。

なるほど。真核細胞は細胞を作り出す条件を満たした上で、更に『核膜』『細胞骨格』『細胞小器官』という3つの要素を加える必要が有るんですね。

では今回話題になった論文で作った人工細胞が本当に真核細胞の条件を満たしているのか、ちょっと見てみましょう。

  • 細胞質と外界を隔てる膜 ←○
  • 生命活動を恒常的に行う器官 ←△
  • 自己複製をするための装置 ←×
  • DNAを閉じ込める核膜 ←○ (DNAはないけど)
  • 細胞骨格 ←×
  • 細胞小器官 ←×

うーむ、ちょっと足りませんね。まだ完全な真核細胞を作るには至っていないみたい。まあWiredが参考にしたpreviewのタイトルは「Catalysis in compartments」ですから、だいぶ大げさな見出しにしちゃったのかな。まさか核(様の膜)があるから真核細胞と言ったわけじゃないでしょうね。

『細胞=生命』すなわち人工細胞を創り出すと言うことは、ヒトの手で命を生み出すことに他ならないのです。世界中の研究者が取り組んでいるけれど、本当の意味での人工細胞が誕生するのはもう少し時間がかかりそうです。

この論文の意義

真核細胞を作ったわけではありませんが、この論文は、人工的に作った複雑な脂質膜の中で化学反応を進行させることに成功しました。この成果は今後の人工細胞の研究の発展に大きく寄与するでしょう。

ちなみに元論文はNature ChemistryじゃなくてAngewante Chemieに発表されました。

化学的に人工細胞を作る他の研究

せっかくなので日本初の人工細胞の研究を幾つか紹介しましょう。大阪大学の四方哲也教授のグループは人工細胞の研究で非常に有名です。

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神奈川大学の菅原正教授のグループは「自らが分裂する人工細胞」を創りだして話題になりました。

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いずれの研究も現在の科学技術を駆使した最先端の研究です。これらの確立された技術が組み合わさることで、いつの日か本物の人工細胞が創りだされたら、それは凄いことですね。

終わりに:「細胞を創る」研究会

日本には人工的に細胞を創ることを目的とした研究会があることをご存知でしょうか?

生命科学の枠内にとどまらず化学、物理学、工学、数学など様々な分野の専門家や市民とともに「細胞を創る」という試みの持つ学問的・社会的・歴史的な意味、懸念、面白さなどについて、多面的に議論・情報交換をしながら理解を深めます。

細胞を創ること、すなわち人工的な生命を作り出すこと。これは科学者の大きな夢の一つであると言えます。人工細胞に興味がある人は、こういう研究会に参加してみると面白いかもしれませんね。

まあそんなことで、また。

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