日焼けすると痛い、その分子メカニズム

今年の夏、皆さん海には行きましたか?彼女とプール?それとも仲間と夏フェス?

さんさんと照り付ける太陽の下、真っ黒に日焼けするまで遊ぶのは夏の醍醐味です。しかし肌が弱い人には日焼けは大問題。少し日に当たるだけでヤケドの様になってしまい、痛みに苦しめられる人もいます。

「なんで日焼けすると痛いんだ?」そのメカニズムの一端を明らかにした論文が報告されました。簡単にご紹介いたします。

日焼けと痛みの基礎知識

日焼けは皮膚が赤く炎症をおこす症状 (sunburn) とメラニン色素が皮膚表面に沈着する現象 (sun tanning) の総称です。日焼けは紫外線を皮膚に浴びた時に照射された紫外線がメラニンの保護能力を超えている時に起こります*1

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(ロート製薬ホームページとWikipediaの図を改変)

紫外線は波長の長さによってUVA (280-320nm)、UVB (320-400nm)、およびUVC (200-280nm) に分けられる。波長が短いほど生物に対する影響が強く、波長が長いほど皮膚の深くに入りこむという性質がある*2

紫外線が皮膚の炎症を引き起こすメカニズムを明らかにするために、筆者らはTRPV4と言う『細胞が圧力や水流と言った機械刺激を感知するセンサーとして機能するタンパク質』に着目しました。

このタンパク質は感覚神経にも皮膚細胞にも発現していますが、筆者らは「皮膚細胞が紫外線を感知する最初の細胞である」という新たな仮説を元に実験進めました。

皮膚細胞特異的にTRPV4を欠損すると紫外線を照射しても痛がらない

Keratin14のプロモーターを用いて皮膚細胞特異的にTRPV4を欠損させると、紫外線 (UVB) を照射しても痛みを感じにくくなり、顕微鏡で肌を観察しても確かにダメージが減少していました。

痛みの感覚情報は感覚神経によって脳へと伝えられます。つまり『紫外線→皮膚細胞→謎のシグナル→感覚神経→痛み』と言う経路があることが想定されます。そこで筆者らはUVBが照射された皮膚細胞で何が起こるかをさらに調べました。

紫外線→TRPV4→endothelin→痛み

TRPV4はイオンを透過するチャネルとして働きます*3。そこでカルシウムイオンの動態を観察すると (顕微鏡で見えるんです) 、確かにTRVP4が無い細胞ではカルシウムイオンの流入が減っていました。また痛みに関係するendothelin-1に着目して調べると、TRPV4がない細胞ではendothelinの発現が上昇しないことが分かりました。

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これ以上はゴチャゴチャしてるので深く知りたい人は元論文を是非。この模式図を見てもらえると分かるんですが、endothelinのautorineがあったりして、実際TRVP4が紫外線照射による痛みシグナルカスケードの何処にいるのかはよく分からないです。そもそもTRVP4自身は紫外線センサーなのか?

TRPV4を欠損するとendothelinを注射しても痛がらない (totalとconditional KOの両方で) というのは示唆的な結果だと思いました。

日焼けの炎症を防止する薬が作れるか?

「じゃあTRPV4を無くす薬を作れば痛くないんですねやったー!!」ってのは短絡的です。皮膚細胞でTRVP4をなくすと肌がカサつくそうですし*4、これでは困りますね。

論文中で、TRPV4の拮抗薬で痛みが減少することがデータとして示されています。現在はステロイド剤などの薬が炎症が起きたあとに使われますが、TRPV4を標的にした薬が実用化されれば、炎症になることを防げるかもしれません。

終わりに

ちなみに僕は夏らしいことほとんどせずに研究室に篭っているので日焼けの痛みにも悩まされず肌が白いよこの野郎。

PS.この論文はオープンアクセスなので、誰でも自由に読めます。夏休み暇を持て余してる人はレッツチャレンジ!

PS2.例の如く専門家の方の優しいフォローお待ちしております。

PS3.日焼けと炎症の論文解説が以前にされていたようなのでこちらも参考にどうぞ。

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