芋虫「葉っぱ食べちゃうぞー」 植物「うわー!電気シグナルを伝えて免疫応答しなきゃー!」

蝉コロンリスペクトで柄にもなくこんなタイトルにしてみました。

さて以下の論文、植物は門外漢の自分にも非常に興味深く読むことができました。面白いと思ったポイントを書きましたが、おかしな表現などありましたら有識者は優しいコメントをお願いします。

害虫による食害と植物免疫

葉っぱを虫に食べられると、植物はそれに対抗するために様々な遺伝子を活性化させ、その結果としてストレス耐性能力を獲得します。この応答に必須の化学物質がジャスモン酸です*1

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(奈良先端科学技術大学院大学橋本研究室の図を改変)

ジャスモン酸と傷害応答
ジャスモン酸は外敵による摂食などの傷害を受けた際に外敵に抵抗する遺伝子を発現させるシグナル物質としてはたらく。エチレンと協奏的に、サリチル酸(病害などへの抵抗性のシグナル物質)とは拮抗的にはたらくとされており、現在分子生物学や植物病理学の分野で盛んに研究されている。

食べられる→謎のシグナル→ジャスモン酸→免疫応答

多くの研究者が謎に思ってたのは「何故食べられた部分から離れたところでジャスモン酸が作られるのか?」と言うところです。数百万個もの細胞から成り立つ葉っぱ、この端から端まで、さらには違う葉っぱにまで食べられたことを伝えるシグナルが伝搬するって、考えてみれば不思議ですよね。

以前の研究で「トマトの葉っぱは電気的なシグナルを伝搬するらしい」ってことが分かっていたという背景が有ったので (Nature, 1992)、筆者らは免疫応答と電気シグナルの関係性に着目して、モデル植物のシロイヌナズナを用いて実験を行いました。

謎のシグナルはGLRsが作る電気シグナルだった

色々調べているんですが、概略がひと目で分かる実験はたぶんこれ。葉っぱにダメージを与えないような弱い電流を与えてみると、免疫応答で上昇する遺伝子の発現が上がりました。これは凄い。

じゃあどんなタンパク質が電気シグナルを作り出すのに重要なんだ、って調べてみると出て来た分子はビックリ、グルタミン酸受容体様タンパク質。

グルタミン酸受容体って動物の細胞では非常にメジャーで、特に神経細胞の電気シグナルには必須だと言うことは非常に有名ですが、まさか植物でもグルタミン酸受容体が電気シグナルを伝搬するとは。あ、グルタミン酸受容体にはイオン透過型と代謝型がありますが、今回同定された遺伝子(GLR3.3aGLR3.6a)はイオン透過型に似ているそうです。

葉の端から端まで電気を伝えるには、発生した電気シグナルを減衰させない仕組みが必要なはずです。リガンドがリレーされる、あるいはギャップジャンクション等で電気シグナルが繋がりつつさらに減衰を防ぐメカニズムがあるのでしょうか?答えが気になるところです。

さてグルタミン酸受容体様タンパク質のリガンドは何なんでしょうか?グルタミン酸なのか?それとも障害を受けて死んだ細胞から類似のリガンドが出てくるのでしょうか?それに関しては今回明らかにされていませんが、今後明らかにされるでしょう。

終わりに

筆者ら考察に書いている文章が印象的でした。

iGluRs and their plant relatives may control signalling mechanisms that existed before the divergence of animals and plants.(論文Discussionより)

進化のどの時点でGluRが生まれ、原始のそれは生物にどのような機能を与えたのか。想像するだけで胸が膨らみます。

いやー、生物って面白い。

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PS.植物ホルモンを擬人化した有名なサイトがあってだな。実に興味深い。

PS2.なんで細胞が電位差を作って電気シグナルを伝搬することが出来るかわからない人はWikipediaをどうぞ*2

PS3.id:watto 植物が電気シグナルを伝えて免疫応答した結果、何か反撃になってるんでしょうか??」
→植物にストレスがかかると様々な防衛関連遺伝子が発現し、ストレス耐性能力を獲得して食害量が減少することが知られています。このプレスリリースが参考になると思います。*3

PS4.Nature日本語版でも解説されていたようです
Nature ハイライト:植物で確認された傷害応答電気シグナル

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