本日のNatureに網膜の神経細胞マップについての論文が発表されました。これは4ヶ月前に記事にしたEyeWireという科学ゲームを作った研究グループから発表されたものです。
今回の論文にはEyeWireのデータは使われておらず、よく調教された学生が解析したデータを使用したようなのですが、せっかくなのでEyeWireの復習も踏まえながら簡単にご説明いたします。
EyeWireってなんだっけ?
脳全体の神経回路を包括的に調べるためにネットゲームで神経回路を繋いでいくという画期的なシステムがMITのグループにより発表されました。
『目(網膜)の神経細胞を繋いで(Wire)いくからEyeWire』と名づけられたこのシステムは、顕微鏡写真の塗り絵ゲームとザックリ考えてもらって結構です。
詳しく知りたい人は昔書いた記事を読んでみて下さい。頑張って書きました。
EyeWireはまだ今回の論文に使われてなかった
この論文では224人のよく調教された学生が、網膜の内網状層*1に存在する3000個以上もの神経細胞を塗り分けたようです。
EyeWireのgroupの論文、acknowledgmentに凄い数の学生の名前が羅列されていた。これが224人の良く調教された学生というやつか。圧巻。>RT
「一人あたり15個?大したことないじゃん」と思われた方、EyeWireを実際やってみれば分かりますが泣きたくなる量です。学生さんお疲れ様です。
今回の論文で分かったこと
膨大な量の画像解析によって一つ一つの神経接続が明らかにされた網膜の3D地図。このインパクトは動画を見るとひと目で理解できるでしょう。1つ1つの神経細胞が塗り分けられており実に美麗です。
網膜に存在する新しいタイプの神経ネットワーク (XBC回路) を発見したことが今回の仕事の成果の一つです。新たな神経ネットワークが明らかにされたことにより、網膜がどのようにして物体の動きを感知しているか、理解が深まりました。
EyeWireへの期待
内網状層のネットワークを調べた今回の仕事がNatureに出たということは、より大規模な解析を行なっているEyeWireも大きなインパクトを生み出すと予想されます。EyeWireをちょっとでもプレイすれば「へへっ、俺がデータ解析した論文がNatureに出たぜ!」とドヤ顔できる日が来るかもしれませんね。
ゲームのユーザー人口が増えるほどデータ解析が進むシステムであり、公式も日本語対応したいと言ってましたし*2、日本語版の解説サイトが充実してほしいものです。
EyeWireはそのままヒト脳の大規模解析に応用出来てしまうことが可能であると予想されます。家でネットゲームをすることで誰でも脳の解析が出来てしまう時代、なんか近未来的ですね。
終わりに
EyeWireはちょっと作業ゲーすぎるので、日本でそれなりにユーザーを掴むために ガチャや萌え要素 ゲーム性を高めて欲しいですね。「神経細胞の擬人化とかしたら面白いかもなー」とぼんやり考えていましたが、ジョークが好きなMITグループなら本気でやりかねないからこわい。
何はともあれ神経ネットワークが解明されていくということは非常に興味深いので、今後の研究が楽しみです。
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PS3.MITの教授が「教科書を日本語訳で出すから買ってね!」っ言ってました(実話)

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