人工的に内耳の感覚上皮を作ったよって論文がNatureに出た

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聴覚は生物にとって重要な感覚の一つです。聴覚器がどういう構造をしているかは良く分かっていますが、受精卵から聴覚器が作られる過程で起こる分子メカニズムはまだ良く分かっていません。

最新の研究では、幹細胞の一種であるES細胞を三次元的に培養することで、内耳感覚上皮によく似た組織を作成することに成功しました。

耳の構造

耳は鼓膜の外側である外耳と、内側である内耳に大きく分けられます。音波は鼓膜を通じて内耳を満たしているリンパ液の波となって変換されます。この波が内耳感覚上皮の細胞を介して脳に音の情報を伝達するのです。

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音が伝わる仕組みをさらに理解し、聴覚疾患を克服するためには内耳感覚上皮を人工的に作り出すことが重要な課題です。しかし内耳の感覚上皮は『神経細胞』と『非神経細胞』が組み合わさった複雑な構造であるため、これを人工的に作ることは大変難しい問題でした。

ES細胞の三次元培養で内耳感覚上皮を作った

研究グループはどんな細胞にでも分化することができるES細胞を用いて機能的な内耳感覚上皮を作成することに取り組みました。

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マトリゲルを用いてES細胞を三次元培養し、培養3日でBMP4を, 培養4.5日でFGF2を投与することにより、内耳感覚上皮の作成に成功した。

作成した感覚上皮には毛の生えた感覚細胞が並んでおり、それらが神経細胞に接続していました。生体内にある内耳感覚上皮にそっくりなことがわかると思います。

この培養系は聴覚疾患の原因解明や、薬のスクリーニングをするための有用な実験系になることが予想されます。

終わりに

まだ培養した細胞を移植することで補聴器の代わりにすることは難しいと思われますが、今後さらに研究が進めば、何時の日か実現する日が来るかもしれませんね。

一番の驚きはBMP4とFGF2だけでES細胞から内耳感覚上皮を作り出せたということです。受精卵が胎児になる過程で、実際このようなメカニズムで耳が作られていると思うと、なんだかワクワクして来ませんか?

PS.論文の責任著者であるHashino Eri先生は名古屋大学で博士号取得後、現在はIndiana大学の准教授をされているようです。凄い。

3D Cell Culture: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology)

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