ショウジョウバエが他種のハエと子作りしない理由が分かった

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えー、はてなブログの月間アクセス数上位20に入っているらしく、それ経由でアクセスが増えてるけど科学っぽいことを書いてなかったので強迫観念にかられて記事を書きました。

ハエの前足にある特殊な神経細胞はセックスする前に種を認識するのに必要不可欠だよ、というお話。


生物の種差と子作り

生物種は互いに交配して子孫を残すことが可能かによって分けられます。異なった生物種間では2つの理由によって交配しにくくなっていると考えられています。

1つ目は受精の障壁です。人間と牛が子作りしてもミノタウロスが生まれないように、遺伝的なバリアーがあると考えられています。

2つ目は受精の障壁です。魚、鳥、両生類などの生き物で、遺伝的には非常に近いのに子作りしないケースが知られています。ではなぜ遺伝的には交配可能なのに、自然状態では子作りをしないのでしょうか?

脳神経回路が種間の交配を抑制しているのだろう

生物の行動は脳神経回路によって制御されます。遺伝的には交配可能だが自然状態で交配が起こらないと言うことは、脳の中に異種間交配を抑制するような神経回路が存在するのことを示唆します。

しかし本当にそんな神経回路があるかはよく分かっておらず、その解明は性と種別と進化を理解する上で重要な問題でした。

ショウジョウバエをモデルにした認知回路の研究

キイロショウジョウバエとクロショウジョウバエは数千年前に進化的に分岐し、互いに子作りをしないことが知られています。また神経回路と行動を理解するモデルとしてよく使われており、この研究目的に適しています。

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今回の論文で研究グループはこれらのショウジョウバエをモデルに用いて、異種間交配を抑制する神経回路を探しました。

ハエの前足が種間交配の抑制に必要不可欠だった

別の種を認識するためにハエは「視覚」「嗅覚」「触覚」「聴覚」などを利用していると考えられます。

それぞれの可能性について検証したところ、驚くことに前足がないショウジョウバエは他種のハエに求愛行動をすることが分かりました。

さらに調べると、GR32aという化学物質を受容するタンパク質前足に存在する神経細胞に存在していました。GR32aを欠損したショウジョウバエでは他種のハエに求愛行動をしたことから、炭化水素を感知するこのタンパク質が異種間交配の抑制に必要不可欠なことが明らかになりました。

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求愛行動は足の神経ではなく脳内の神経回路によって形作られると考えられています。そこでGR32aが接続する相手を探すと、性行動のマスターレギュレーターである脳のFruM神経細胞に結合していることが分かりました。

FruMが少なくなったショウジョウバエは他種のハエに求愛行動を起こしたことから、FruM神経細胞も同様に異種間交配の抑制に必要不可欠なことが明らかになりました。

人間にも同じ神経回路があるんですか!?

この手の話が出るとよく人間に関連付けて「異種姦を防ぐ神経の発見」とか「お前らがsexできない神経回路がわかったwww」とか誇張したタイトルでニュースにされるわけですが、人間の手にはGR32a神経はないんじゃないっすかね。知らないけど。

個人的な感想としては、人間が腕でヘキサンやペンタコサンを感知して異種姦を自制しているとは思えないです。でもヒトの脳内にも性に関係する神経回路はあるので、今回の論文ではそういう議論はしてないけど、今後人間でも似た神経回路が見つかったら面白いですね。

PS.この論文はFree Featured Articleなので誰でも無料で読めます。興味がある人は元論文を是非。

PS2.ちなみにメスは前足の有無で求愛行動が変化しなかったらしいので、今回の発見はオス特異的だと言えます。

PS3.コメントありがとうございます。完全に見落としてました。

PS4.あとで時間できたらpreview読んで追記しますたぶん。

ショウジョウバエ物語 (ポピュラーサイエンス)

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