「冷蔵庫に入れた野菜が萎びてしまった!」「カビが生えてしまった!」と言う問題は、自炊をする方々にとって大きな問題だと思います。
最新の研究で『アントシアニンを増やすことでトマトの日持ちが二倍程度向上する』ことが明らかになりました。簡単にご紹介致します。
人工的にムラサキトマトを作る研究
品種改良によってアントシアニンを含むトマト (黒トマト*1、ブルートマト*2etc…) が作られて来ました。しかしこれらのトマトは皮の一部だけでアントシアニンを発現しているため、その含有量は多くありません。
そこでバイオテクノロジー技術を応用してアントシアニンを多く含む野菜を作出する研究が進められてきました。近年になって、キンギョソウの遺伝子を導入することで、ブラックベリーと同等程度のアントシアニンを含むムラサキトマトが作出されました。

キンギョソウ (Agrobacterium tumefaciens) 由来の転写因子であるDelとRos1を果実特異的な遺伝子プロモーターであるE8の下流で同時に発現させることで、トマトの果実にアントシアニンを合成させることに成功した(Nature Biotech., 2005)。
さらにこの論文では「アントシアニンを多く含むムラサキトマトを食べ続けたガンのモデル動物は寿命が優位に伸びた」と報告しており、人々から大きな注目を集めました。
ムラサキトマトは日持ちする
今回の論文で、研究グループはムラサキトマトの特性を追求しました。まずトマトの日持ちを調べたところ、ムラサキトマトは軟化しにくくカビが生えにくい事が分かりました。

アントシアニンが日持ちを良くする原因であるかを実験的に検証するために、研究グループはオレンジトマト (DelとROS1を発現するが下流のアントシアニン合成酵素が少ない) を作成して同様の検証を行いました。するとオレンジトマトは赤いトマトとムラサキトマトの中間程度の日持ちになることが分かりました。

これらの結果は、アントシアニンが持つ抗酸化作用が軟化とカビの感染のそれぞれを抑制していることが示唆します。全ての果実に今回のDelとRos1の発現が有効だとは思えませんが、他の天然抗酸化物質を増やすことでも果実の日持ちが改善するかもしれません。今後の研究に期待します。
で、ムラサキトマトって美味しいの?
結構な紫色です。このくらい色が濃いとおそらく渋みというかエグ味というか「アントシアンの味」が出てしまうと思います。紫サツマイモの極濃紫色の品種もふかしただけで食べてみると、エグいのですが。
アントシアニンが多すぎるトマトは美味しくないかもしれません。しかしロシア原産の黒トマトと言われる品種を食べたレポート*3はトマト嫌いにウケているようです。もしかするとムラサキトマトも好きな人にはたまらない味なのかもしれませんね。
実物を食べてみないと味についてはコメント出来ませんので、いつの日か自分自身でムラサキトマトを食べて、その味をレポートしてみたいものです。

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