MIT Media Labが創った『シルクパビリオン』はロボットとカイコが織り成す芸術だ!

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Twitterを見ていたら慶応大学の山中俊治教授のtweetが流れて来ました。

シルクパビリオンでググると英語の記事はたくさん出てくるのですが、まだ和訳記事が見当たらないので簡単にご紹介致します。


どうやってシルクパビリオンを作ったか

シルクパビリオンを作ったのは米国マサチューセッツ工科大学内の研究所であるMITメディアラボです。メディアラボは学際的な研究に焦点を当て、斬新で芸術的な統合分野を開拓しています。

Neri Oxman教授を中心とした研究グループは『デジタル技術と生物が作り出す物質とを組み合わせることで建築物レベルの作品を作り出すことが出来るか』挑戦しています。

今回は一本の糸から繭という三次元構造物を作り出す蚕を用いて巨大な人工物が作れるか取り組みました。

1.蚕の糸を吐く性質を調べる

シルクパビリオンを制作するためには蚕が糸を吐く性質を理解し、設計通りに織り上げることが必要です。

まず研究者たちは壁の曲率や柱の高さを変えて繭が形成される様子に違いが有るか観察しました。

非常に面白いことに、壁の曲率を変化させると糸の密度や特性、また全体としての構造が変わることが分かりました。

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また蚕は糸の密度が高いところに集まるため、これらを考慮してシルクパビリオンの枠組みを設計する必要があります。

2.曲率と密度を計算してロボットで絹糸を張る

まず金型で26コの多角形を作り、その1つ1つに、CNC(Computer-Numerically Controlled)マシンを用いて絹糸を張り巡らせました。

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シルクパビリオンの最終的な形態は球状です。研究者たちが計算した結果、26コの多角形を組み合わせて球体を作る設計になりました (論文が見当たらないため具体的な数値は不明です)。

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3.蚕に糸の隙間を埋めさせる

張り巡らされた絹糸の上に6,500匹もの蚕が乗せられ、各々が口から糸を吐いて枠糸の隙間を埋めていきます。

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多角形の1つ1つが絹糸によって埋められたら、次は多角形の隙間を絹糸で埋めながら球状を作り上げる作業です。蚕は陽の光を避ける性質があるので建物に差し込む太陽の動きも考慮しながら作業を進めます。

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完成したシルクパビリオンがこちら。適切に計算することで蚕を生物プリンターの様に扱うことが出来たという今回の結果は、今後の工業的応用を予感させます。

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終わりに

蚕は少なくとも5,000年まえから人間によって飼われています。見て可愛く、絹糸は重要な天然繊維であり、食べてもおいしい(?)、まさに人類にとって欠かすことのできない昆虫です。
通常、繭を作った蚕は絹糸を取るために茹であげてしまいます。しかしシルクパビリオンの製作方法だと、使用した6,500匹の蚕を殺さずに羽化させて150万個もの卵が採れる(計算だ)と書かれており、もしかしたら効率的な養蚕に繋がるかもしれません。

近年、バイオテクノロジーを用いて蚕が作り出す絹糸の性質をさらに向上させる試みが行われています。

最新の科学技術と伝統的な養蚕を組み合わせ、これからもさらに色々な試みがなされていくことでしょう。自然を大切にしていきながら、生物の未知なる可能性をさらに追求してきたいものです。

カイコ―まゆからまゆまで (科学のアルバム)

カイコ―まゆからまゆまで (科学のアルバム)

PS.カイコが繭を作るためにはある程度の高さを持った柱が必要なようです。モスラが東京タワーを繭作りに使ったのも納得ですね!

PS2.元論文など実際のデータが見当たらず、Media Labの文章を元に書いたのでちょっと自信ないです。間違いがあったら宜しくお願い致します。

PS3.関西科学美術部(@Sci_St_Art)という理系大学生を中心としたサイエンスアートの団体があるようです。日本発の科学芸術を楽しみにしています。

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