研究者がメロメロ!愛くるしい生物クラミドモナスの誕生に関するお話

堅苦しい内容の科学記事を書くのに疲れたのでたまには緩い内容を。

クラミドモナスと言う単細胞生物が生まれる過程で不思議な小胞を出すんだよ、と言うお話。


モデル生物クラミちゃん

クラミドモナス (C. reinhardtii) は葉緑体を持つ単細胞生物です。その辺の池とか水たまりにいます。

クラミドモナスは高校生物の教科書に頻出する御用生物です。数多くの受験生が勉強をするうちにクラミドモナスの愛くるしさに気づいて研究の道へ進むことを決意したそうです。

古くは秦の始皇帝の時代から人々に愛されてきたクラミドモナスは、19世紀初頭には神聖な生物として崇められるようになりました。そうして誕生したのが、イマジナリィ・キャラクタァの「クラミちゃん」です。

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生物であるクラミドモナスを定期的に世話をするのはとても大変なことです。百年もの間良好な環境で飼育され続けたクラミドモナスは、二本の鞭毛を使って飼い主に感謝の気持ちを伝えるという伝説があります。

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もちろん半分以上は冗談ですが、クラミドモナスは遺伝学や生物物理学など色々な研究に使いやすいので、多くの研究者に愛されていることは事実です。

クラミちゃんはぷりぷり動く

クラミドモナスが泳いでいる動画を見てみましょう。動き方が実に可愛いですね。目がいい人は二本の細い鞭毛が動いてることに気づくかもしれません。

動画の後半に出てくるゾウリムシは沢山の繊毛を動かして進みますが、クラミドモナスはたった二本の鞭毛を使って上手に進みます。鞭毛は高度なモーターでありセンサーでもあります。

クラミちゃんの一生

クラミドモナスは無性生殖と有性生殖のどちらでも増えることが出来る不思議な生き物です。栄養が十分な時は無性生殖で増殖し、飢餓状態になると有性生殖を行います。

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娘細胞が母細胞から出るためには細胞壁を壊す必要がありますが、どのような分子メカニズムで細胞壁が壊されるかはよく分かっていませんでした。

鞭毛から分泌される膜小胞の発見

最新の論文で鞭毛と生殖を繋ぐ興味深い現象が報告されました。クラミドモナスが母細胞から出てくる時に鞭毛からectosomeという小胞が分泌されているというのです。

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さらに詳しく調べると、ectosomeの中には母細胞から出てくるのに必要なタンパク質分解酵素 (Plant&Cell Physiology, 2009) が入っていました。『鞭毛から放出されたectosomeが細胞壁を分解することで母細胞から出るのを助ける』というのが彼らの仮説です。

鞭毛は多くの細胞に共通する構造です。つまり哺乳類でも鞭毛が小胞を分泌することで個体の発生や細胞間コミュニケーションの過程で機能している可能性が示唆されます。

外部刺激のセンサーとしての鞭毛機能は良く知られていますが (Current Opinion in Cell Biology, 2012)、外部にシグナルを出す拠点としても機能する可能性を示唆した今回の発見は非常に興味深く、Current Biology誌のハイライトで紹介されています。

終わりに

高校生物の教科書でしかクラミを見たことがない人がいるかもしれません。しかしクラミドモナスは今でも最先端の研究に用いられているモデル生物です。

クラミを心から愛する研究者たちは日夜心血を注いで新たな生物学現象を発見しています。今度の休日、池にクラミドモナスを採取しに行ってみませんか?

PS.クラミちゃんのイラストは@mabilityが昔に描いたものを使わせて貰いました。

PS2.高解像度のクラミちゃん画像が欲しい人はお問い合わせ下さいな。

PS3.藻類の有性生殖を観察するアプリ『AlgalSex』も面白いよ!

PS4.この論文はFree Featured Articleなので誰でも無料で読むことができます。

ミドリムシは植物ですか? 虫ですか? I (B's-LOG COMICS)

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研究者がメロメロ!愛くるしい生物クラミドモナスの誕生に関するお話」への3件のフィードバック

  1. ぽぽぽぽーんのは壁紙にさせて頂きました。
    ありがとうございます。
    ブログの題名って、『風街ろまん』からとったんですよね?

  2. はい、ブログタイトルは『風街ろまん』のオマージュです。はっぴいえんどが好きなもので。

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