「メスがsexを拒否する!?」性行動を制御する神経回路の発見

f:id:mdr52:20130831125759j:plain

マウスでの結果ということを前提にお読み下さい。

オスとメスの行動の違いは脳の性差が作り出します。しかし脳に存在するどの神経回路が行動の性差を作り出しているか、その実体はよく分かっていませんでした。

「視床下部に存在する2,000コ程の神経細胞集団が性行動を制御している」ことをカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究グループが発見しました。


視床下部は性行動に関係する脳部位である

視床下部は『摂食行動や飲水行動、性行動、睡眠などの本能行動の中枢』また『怒りや不安などの情動行動の中枢』であることが分かっています。
しかし視床下部に存在して性行動を制御する具体的な神経回路は分かっていませんでした

f:id:mdr52:20130522190028j:plain

研究グループは女性ホルモンの一種であるプロゲステロンを感知する神経細胞(PR+神経細胞)に着目し、この神経細胞集団に性差が有るかを調べました。

視床下部に存在するPR+神経細胞に性差がある

するとメスのPR+神経細胞の数はオスのそれよりも1.5倍程度多いことが明らかになりました。さらにPR+神経細胞は性行動を制御することか知られている脳領域に突起を伸ばしており、性行動との関係が強く示唆されました。

f:id:mdr52:20130831125821j:plain

それではプロゲステロン受容体を持つ神経細胞は本当に性行動を制御しているのでしょうか?

PR+神経細胞がなくなったマウスは性行動が変化する

PR+細胞を選択的に除去すると、性の違いによって異なる表現型が見られました。

  • メスの拒否行動が増える。
  • オスの性行動(メスにまたがる、性器の挿入など)が減少する
  • オスの攻撃行動が減少する

オスでは攻撃性が減少するのに運動性, 体重, 男性ホルモンの量は大きく変化していないという結果は、PR+神経回路が特異的な機能を持つことを裏付けます。

この論文の新しいところ

「サトリ」という遺伝子が無くなったショウジョウバエのオスは、同性に積極的な性行動を行います*1。またフェロモンを感知する神経細胞に異常が有るメスマウスでは、オス特異的な性行動をオスとメスの両方に示すことが知られています*2

PR+神経細胞がなくなっても性別の認識は変化せずに性行動が変化するという今回の結果はこれまでにない新しい発見です。フェロモンを感知する器官が退化しているヒトでもPR+神経回路は存在すると予想され、この研究はヒトの性差と性行動に関係する興味深い発見だと考えられます。

終わりに

オスとメスは全身の細胞で性染色体が異なるので非常に様々な性差があることは皆さんご存知の通りです。またプロゲステロンだけでなく、他のホルモンも性行動に関与する*3ので、PR+神経細胞だけが性行動に重要な神経回路ではありません

生物の体は非常に複雑でありますが、今後の研究が進むことによって、脳が制御する情動・本能行動のメカニズムが解明されていくことを期待します。

PS.「じゃあ人間でもPR+神経細胞をいじれば性行動の制御が~」って意見が出ると思いますが、今の技術じゃほぼ不可能です。

PS2.「食べたり化粧品塗ったりしてプロゲステロンを制御することで~」ってのも難しそうですよね。この細胞だけに効くわけじゃないし。

PS3.プロゲステロンがネットでどう扱われてるか調べてたら「プロゲステロン=ブスホルモン」って出てきたんですけどなんぞそれ。

PS4.性的衝動に定評がある向井秀徳にこの論文を捧げたい。

Pocket

「メスがsexを拒否する!?」性行動を制御する神経回路の発見」への1件のフィードバック

コメントは停止中です。