2011年のNHKスペシャルで『あなたの寿命は延ばせる~発見!長寿遺伝子~』という特集があったのを覚えている人はいるでしょうか?
「加齢に伴った病気が治るかもしれない」「寿命が伸びるかもしれない」
人類の大きな期待が、この長寿遺伝子に集められています。
老化に関わる遺伝子Sirtuin
Sirtuin(サーチュイン)は長寿遺伝子、抗老化遺伝子とも呼ばれます。Sitruinは酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウスといった生物の研究から寿命を伸ばす機能を持つと考えられています (Nature 2006)。
Sirtuinは癌、アルツハイマー病、2型糖尿病といった加齢に伴った病気に関与します。このことからSirtuinを制御する薬の開発が非常に重要な課題とされてきました。
赤ワインで寿命が伸びる?
赤ワインに含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールがSirtuinを活性化させることが報告されています (Nature 2003, Nature 2006)。
しかし残念なことに、実験結果と対応する量のレスベラトロールを摂取したければ1日にボトルワインを100本飲まなければなりません。毎日そんなにワインを飲んでいたら寿命をのばす前に死んでしまいます。
長寿遺伝子を活性化する薬の開発
「赤ワインにレスベラトロールが少ないなら濃縮すればいいじゃない!」ということでレスベラトロール製剤が作られました。またそれよりもSirtuinの活性化が強い様々な薬剤が作られています。
「これらの薬を使えばSirtuinを活性化させて寿命を延ばせる!」と思いましたがそう簡単にはいきませんでした。
ある研究グループは「薬でSirtuinを活性化させたら血糖値や肝脂肪などが下がったよ!」と報告しました (Cell Metamolism 2011)。しかし製薬会社は「Sirtuinを活性化させる薬はダメだった・・・」と言って臨床開発を断念しています (New York Times 2011)。
これらの相反する2つの報告は、本当に薬でSirtuinを活性化して病気を治療し、ひいては寿命を延ばせるのかと言うことに疑問を呈します。
本当に薬でSirtuinを活性化することが出来るのでしょうか?研究者はこの問題に取組みました。
薬がSirtuinの活性化させる仕組みがわかった
2013年3月8日にScience誌に報告された論文は、薬がSirtuinを活性化させるために2つの仕組みがあることを明らかにしました。1つはSirtuinと標的タンパク質の結合、もう1つは薬とSirtuinの結合です。
効率よくSirtuinだけを活性化される薬の研究が進めば、何時の日か加齢に伴った病気が治るかもしれません。楽しみですね。
終わりに
こういう研究がニュースになると「赤ワイン飲めば寿命が伸びる!!」とか「Sirtuinの活性を上げるタンパク質が多く含まれてる食べものはなに?」と食を前面に押し出したコメントをよく見ます。
生物の体はとても複雑にできているので食べただけでどうにかなるっていう事は殆ど有りません。だから薬が研究されるのです。
何時の日か人類の寿命が伸びる未来が来ることを願って、今日は偉大な成果を成し遂げた研究者たちに赤ワインで乾杯しましょう。