『死んだあとも働き続ける「ゾンビ細胞」の開発に成功!!』というニュースが回っているな。あれは嘘だ。

2chまとめサイトを見てたら上記のようなタイトルの記事があったので「そんなわけ、ねーだろ!」と思いながら読みました。

元とされる記事が既におかしい
ソースを辿るとコモンポストでした。コモンポストは誰もがニュースを発信できる投稿型ニュースサイト、だそうです。

しかしコモンポストに挙げられた記事のソースは海外の科学ニュースサイト。既にここでZombie Cellという言葉が使われていることが分かりました。

細胞は完全に死んでおり機能できない
「ケイ素によってコーティングされた細胞は、まるで生きている細胞のように活動するどころか、生きていたとき以上の能力を持つようになりました。形はそのままに高い圧力や温度にも耐えることができ、死んだ後も細胞として”作業”を続けるといいます。」

確かに上記だけ見ると細胞がゾンビのようになって、生きている時よりも積極的に活動しているように見えます。

しかし本論文ではまず細胞をホルムアルデヒドで完全に殺しており、次にpH3のケイ酸で16時間処理、550℃の高温で3時間処理しています。
この条件で生き延びることができる細胞はまず有りません。細胞は動くことも分裂することも出来なくなります。

この論文の真実
珪藻という、細胞が珪酸質の被殻に包まれている藻類の仲間が存在します (珪藻 – Wikipedia)。

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ガラスで出来た複雑な被殻を持つ生き物”珪藻”、筆者らはこの生き物から着想を得て珪酸を持たない動物細胞に珪酸を取り込ませる実験を行いました。ケイ素を取り込ませた細胞は高温・高圧環境でも良く形態を保っていました。

夢を砕いてしまいますが、死んだあとも生き続けるゾンビ細胞は出来ていません。
しかし今回の論文はより生に近い構造を保ったまま細胞を電子顕微鏡観察するのに役立つでしょう。また人工血管などのバイオマテリアルの発展に貢献し、何時か皆様の役に立つかもしれません。恐ろしい研究ではなく素晴らしい研究です。

より詳細な内容が知りたい人は、ProNASに出た元論文を読んでみて下さい。

最後に
ゾンビ細胞という言葉は研究者が所属する研究機関のプレスリリースで使われたようです。

情報は伝搬するに従って形を変え、インパクトのある部分だけが伝わって瑣末な部分は消えていきます。折角の素晴らしい研究内容が曲解されかねないという事を考えると、プレスリリースで大衆受けしそうな言葉を多用するのも考えものですよねえ。

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